KIHADA SHINKUROの秘密、その1.
2007/07/09


10年ひと昔などと申しますから、3回昔の30年ほど前のこと。
ちょうどフライを始めたばかりの頃のことですが、なかなか思った釣果が上がらなくて困っておりました。
日本にフライフィッシングが上陸した黎明期ですので、殆ど情報もなく、
またフライは西洋のゆったりと流れる河川に向いた釣り方で、日本のフリーストーンの渓流では、
あっという間にフライが流されてしまって、釣りにはならないよ、などといわれておりました。

それでも結果が出ないままにあちこちの渓流を釣り歩いていたのは、
せっかく買った道具が高かったものですから、釣れなくてこのまま道具を眠らせてしまうのは、
ちょっと悔しいなどと思っていたからでしょう、単なるケチなのですね。

そんなある日のこと、たまたま九頭竜方面の職漁師の秘密の毛鉤について知る機会がありました。
テンカラの伝承的なパターンのことですね、一子相伝で伝わっているものでしょう。
秘密はKIHADA SHINKUROにあり、と書いてあったのですが...?

ここでちょっと脱線します。
郡上八幡には古田万吉さんを初めとして、恩田さんとか酒井さんとか、
伝説的な職漁師が何人かおられたのは、皆様ご存知のとおり。
彼らが狙うのは春は川虫でアマゴ、その後はミミズでサツキを狙って、夏は鮎、
こんな一年を繰り返しておられたようです。
郡上の職漁師はアマゴには川虫を使うことが多く、テンカラを使う人はあまりおられなかったと伺います。
それは川虫がふんだんに手に入るからという、地の利があったからかもしれません。
ただし、テンカラで釣れるアマゴは、状態の良い魚が多いといわれており、
焼いて食べると、餌で釣ったアマゴよりもおいしいと評判で、
川魚専門の問屋さんでも、テンカラで釣ってきたアマゴは、高く買ってくれたそうです。
そういえばフライで釣っていても、ニンフで釣れる魚とドライで釣れる魚では、
後者のほうが良い状態の魚が出てきますから、なるほどと肯けますね。

たぶん今でも郡上八幡の釣具屋さんの何処かには、
1本1,000円ぐらいでの値段でマムシ鉤を売っていると思いますが、
これはマムシの皮をボディに巻いた郡上のテンカラ師の秘密のパターンで、
水の中に入れると青ビカリして魚を誘うそうですから、チラッと興味はありました。
けれども、どれだけ釣れない日々が続いても、マムシ鉤を買うことはありませんでした。
今でこそ、蛇様をみればその日は爆釣などと、ラッキーサインのように有難がっておりますが、
当時は蛇は見るのもイヤで、そのせいか蛇取りが多い石徹白には、まったく近寄らなかったものです。
蛇取りにとって、特にマムシは中区大須の蛇屋さんに持っていくと高く買ってくれますので、
石徹白周辺は大事なテリトリーだったようです。いまでも蛇取りはたまにみかけますね。
九頭竜のダムに流れ込む谷の幾つか、特に林谷とか、荷暮などもマムシの多いところですから、
どうぞ皆さん、お気をつけ下さいね。

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脱線が長すぎましたね、本題に戻りましょう。

職漁師の秘密のテンカラ鉤の特徴をようやくつかんだのですが、
KIHADA SHINKURO、きはだしんくろ、キハダシンクロ?
 さていったい何のことかさっぽり分かりません。
思いあぐねて、漢字で幾つか当て字してみて一番しっくりときたのは、黄肌芯黒...
おおっと、たぶんバジャーのハックルのことじゃないでしょうか、うまく言い表しておりますな。
この職漁師、きっと学があったのでしょう。

ところで、郡上の職漁師はイワナは釣りませんでした。
それはアマゴのほうがお金になったからですし、そのあとは鮎もサツキも溯上してきたからです。
一方、九頭竜の職漁師は、郡上よりもさらに山深く、
イワナを釣って生計を立てるしか、手がなかったようです。
豪雪地帯の山里では海の魚は簡単には手に入りませんから、イワナも貴重な蛋白源、
けっこう良い値段で取引されたのでしょう。
そのせいなのかどうか分かりませんが、石徹白はずっと禁漁期間がなく、
年中釣ってもOKの状況が、長く続いていたように記憶しております。

郡上のような開けた地域とは違って、谷が深ければ簡単に川虫を集めることができませんので、
九頭竜に限らず、全国各地の伝承として残っている職漁師のスタイルの多くは、
餌ではなくテンカラで釣っていたようです。
テンカラなら餌の調達は簡単ですからね、雨が降ろうが槍が降ろうが関係なし。
携帯にも便利で、必要な時に何時でも取り出して使えますので、
保存の効くテンカラは、深山渓谷を釣り歩く職漁師には重宝したと思います。
生餌ではこうはいきませんからね。
おまけに毛鉤を巻く材料は庭で買っているニワトリですから、ホントに手間要らず。
テンカラ鉤は貴重な餌だったことでしょう。

ここ何年かはハックルの改良が進んで、入手しづらいバジャーもすこしづつ手に入るようになりましたが、
30年前はまだまともなハックルはなく、バジャーなんて知識だけで現物は出回っておりませんでした。
メッツはもうあったかなぁ?ホフマンはまだなかったかも?そんな時代でした。
それでもなんとかサワダ系のルートで、
インディアンかチャイニーズかどちらかのバジャーケープを1枚見つけて、さっそく巻いてみました。
ライトケイヒルのハックルをバジャーに変えたそのパターン、釣れたかですって?
もちろん釣れましたよ、爆釣です。
これで釣れない日々とはおさらばじゃぁ〜
九頭竜の職漁師の知恵に感謝、感激、雨あられ、
何処かでお目にかかったら三顧の礼を持ってお迎えしよう、そう思うほどの効果がありましたよ。

以来、橋の下をたくさんの水が流れ、人の心の有り様もずいぶん変わってしまいましたが、
イワナの心は昔と変わらず、黄肌芯黒のパターンはずっと健在です。
小生がバジャーのハックルや、バジャーのゴマの多いスペックルドバジャーにこだわるのは、
長い間の釣れない経験があるからなのですが、
フライパターンに迷われる初心者の方にも、こんなパターンを作ればきっと釣れると思って、
バジャー系のハックルをオススメしております。
九頭竜水系に限らず、岐阜、福井、石川、富山など、この地域全域で有効なハックルですので、
その昔の職漁師の伝承の知恵を、ぜひ皆様もお試し下さい。

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さて本日も庄川の一色に来ております。
いつものように昼過ぎまで仕事して、夕方の17時ごろに現地到着。
最近になって尺イワナが何本か上がっておりますので、今日も期待したいところ。
水量はどうかなぁと思って橋の上からのぞいてみますと、



平水でした。梅雨のなかだるみですね。
遡行が楽になるのは有難いのですが、魚の活性がちょっと落ちるのが気がかり。
お蛇様の姿も今日はなし。

さっそくやってみますと、


こんなサイズばかりでしたが、23〜4cmの天然物主体で、16匹ほどの釣果。
19時までの2時間ほどの結果ですので、数量的には充分満足です。

本日使ったフライは、30年近く使っている#13KIHADA(キハダ)、
最初はマスタッドの94840などのフックを使っておりましたが、
TMCのフックが開発されてからは、フッキングの優れたTMCのフックを使うようになり、
また、奇数番手が開発されてからは、102Yと103BLがメインのフックです。
このところ紹介しております#11ラストホープBOは102Yを使っておりますが、
このキハダはより軽くしようと思って、103BLを採用しております。
おかげでフッキングの良いこと。
バーブレスですので、フッキング能力はピカイチでしょう。
最近になってテールの素材を変えてからは、さらに戦闘能力が向上しました。

まぁまぁ数は釣れましたので、何も文句はないのですが、
実は本日は尺イワナ狙い、この季節の道具屋は、必ず尺サイズを釣らなければいけません。
残念ながら今日は水量が平水に治まっておりましたので、大物の影はありませんでした。
かといって、このままのこのこ帰れないのが釣り道具屋の辛いところ。
釣れなければ帰れない、昔の職漁師の心境を想いやります。
不漁の日は帰るに帰れず、女房や子供の顔も見れないまま、山中で一夜を明かしたことでしょう。

早朝の一時を狙ってみますか...
そう思って現代のへたくそ職漁師は、車の中で一夜を過ごすことにしました。
2時過ぎにふっと目が覚めると、ウィンドウガラスには雨粒がポツリポツリ、
やがて見る間に本降りになってきて、雨脚は強まるばかり。
さてこんな状況で、尺イワナは釣れるのでしょうか...

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さて、今回使ったフライは、
九頭竜の職漁師の伝承パターンをヒントにした、30年近く使い込んでいるパターンです。
名前を考えるにあたって、
なんせ九頭竜水系では、50cmのアマゴも70cmのイワナもテンカラで釣るお国柄ですので、
職漁師の武勇伝を盛り込んで”OLD SAGA”にしようかな、
それともそのままの”バジャーケイヒル”にしようかなどと、アレコレ考えたのですが、
結局職漁師の言葉をいただいて、”キハダ”に決めました。

キハダはメインが#13で、
春先にヒラタやクリーム系のコカゲがハッチする時には、#15〜17を使っております。
今の季節には、18:00までをこのパターンで釣り、
大物の気配がある場合には、#11のラストホープBOにチェンジすることがございますが、
フライの交換が面倒な時は、そのままこのパターンを使います。
老眼が進んでフライの交換がおっくうになりましたので、今回はそのままこのパターンで続けましたが、
平均サイズのイワナやアマゴはもちろん、尺サイズの大物にもOKで、
九頭竜水系でも庄川水系でも、過去に相当数の尺サイズのイワナやアマゴを釣っております。

- #13 キハダ -


フライを巻く時間のないお方、
あるいはこの地方で効果的なドライフライをお探しの方、
ぜひ当方のキハダをお試し下さい。

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