イワナの恩返し?ぜひお願いします。
2008/07/15


年齢を重ねるに釣れ、さまざまな障害が立ちふさがって、
簡単に釣りに行くことができなくなってきます。
ある程度の年齢が進んだ皆様なら、思い当たることが幾つかおありでしょうね。

独身の頃ですと何処に行くにも、何をするにも自由気ままでしたが、
たとえば、結婚して嫁をもらいますと、伴侶の手前もあってなかなか家を出難い。
あるいは、子供が出来ますと手もかかるしお金も必要ですので、
頻繁に渓流に行く事など、家庭の事情が許さなくなってしまいます。

もう少し年齢が進みますと、
通風で歩くのさえ辛いとか、糖尿病にかかってしまってなどといった、
ご自分の病気のせいで釣行を諦めることもあれば、
親の介護をしなければならないとか、
家族の都合で釣りに行けなくなることもございます。

私の親父は3年ほど前に旅立ちましたが、亡くなる前の2年間は、
ほとんど寝たきりになってしまって介護が必要でしたので、
その間は遠出をすることが難しく、釣行回数もずいぶん減ったものでした。
夜間に携帯電話が鳴りますと、ビクビクしたことを今でも覚えております。
さいわい母親のほうはまだ元気ですので、昨年はずいぶん渓流に通う回数が増えましたが、
残念なことに今期は他の事情により、ガタンと釣行頻度が減っております。

と申しますのも、我が嫁の実家は豊橋にあるのですが、
実は嫁のご両親が二人とも体調が悪く、外科的処置ができない状態が続いております。
そのような状態になりますと、今度は代替治療の可能性を追求しますので、
毎週月曜の定休日には豊橋に通って、
ビワの葉温灸をしてあげたり、ツメもみをしてあげたり、
あるいは、にんじんジュースやブラックジンガーのような玄米の製品を持って行ったりして、
わらにもすがるような想いで代替治療のいくつかを試しております。
きっと似たようなことをやっておられる方も、大勢おられるのでしょうね。
医者に手術ができないと宣告された方たちは、ネットなどで情報を調べて、
同じような所に辿り着かれるのではないでしょうか。

幸い代替治療の幾つかは少しづつ効いているようで、
嫁のご両親は毎週月曜の定休日を楽しみに待ってくれておりますので、
私としましても励みになり、頑張って通っております。
従って、ここ3ヶ月ほどは渓流とは、とんとご無沙汰になっております。

口の悪い外野からは、
道具屋の店主が釣りに行かないとは最低だ、などと聞こえてくるのですが、
まぁ人間それぞれの立場になってみないと、物が見えないことも多くありますので、
外野は勝手に言っててください、
いずれお前らも年を取って病気の両親を抱えると、
おらの今の気持ちが分かるだろうよ、などと思っております。
二人に一人は癌になる時代といわれておりますから、
きっと外野で批判している人達も、その時になって慌てるでしょうね、
自分の番が来た時のために、今から心の準備は良いかな...。

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さて今週は月に一度の連休ですね。
昨日の月曜日は嫁の実家に伺って、親孝行の真似事をしてきました。
火曜日の今日は、メールのチェックと通販の荷造りを済ませますと、昼からは空いております。
嫁のご両親もちょっとは良くなられたので、今日は久し振りに馴染みの川へ行ってみましょう。
昼下がりの3時ごろに店を出て、夕方の5時過ぎに庄川の支流に到着、
庄川インターができたおかげで、本当に釣行が楽になりましたね。

すぐに道具をセットして、いつもの入溪点から釣り上がっていくのですが、
暑さのせいでしょうか、それとも水量がちょっと多いからでしょうか、魚の反応がまったくありません。
1時間ほど釣り上がりましたが、全然魚の気配がなし。

いったん入溪点に戻って作戦練り直し。
夕方の6時といえどもまだ暑い、きっと魚達は物陰に隠れているのでしょう。
そう思ってご覧の画像のような、木の陰の奥ギリギリまでフライを放り込んでやりますと、



真ん中の沈み石のさらに奥で、20cm越えのイワナがようやくヒット、
嫌なところに潜んでおります。



だいたいその日の傾向が分かりますと、似たようなポイントを釣って行けば釣果が上がります。
6時半までの30分間で3匹ほどゲット、すべてフライを届けるのが難しい、イヤらしいポイントに入っておりました。

やがて周囲がだんだん暗くなってきますと、いよいよイブニングライズの時間帯に突入です。
このあとの1時間は、気合を入れて大物を狙う時ですね。
この時を”逢魔が時”などと申しますが、震えるような魔物サイズに逢ってみたいものです。
セキレイがさかんに岸際の葦をつついておりますので、
何かハッチしているのかなと思ってカメラを向けてみますと、



フラッシュが光ってしまったのでちょっと見にくいのですが、モン様でした。
この季節のハッチですと、フタスジでしょうかね。
これで条件は整ったようです、ラッキィ〜。

この川の馴染みのプールは二つありまして、どちらにも尺クラスが入っているはず。
一つ目のプールは先に20cmクラスが出てしまいましたので不発。
もう一つ目のプールに駆けつけて、手前の筋から順番に探って行きますと、
奥の筋のど真ん中でバシッとヒット。
底へ底へと重々しいファイトを繰り返しますので、けっこう良いサイズのようです。
やがて、観念したかのようにゆっくりと浮いてきたのをスパッと掬ってみますと、
新調したカリンのネットに収まったのは37cmのイワナ、顔が優しいのでメスでしょう。



37cmありますと4年ぐらいは生きているでしょうか。
一般的に渓流のイワナは、だいたい4〜5年ぐらいの寿命がありますので、
人間に例えるならば、もう高齢のほうですね。
たぶん今年の産卵が最後になるかもしれないね。
そんなことを考えながら写真を撮っていますと、
お年を召した嫁の母上の顔が、ふっと頭に浮かびます。

”お前ねぇ、オラはイワナを食べるのが大好きな鬼のような奴だけど、
今日だけはカンベンしてやるから、無事に生き残って子供をたくさん産めよ。”
そんなことをぶつぶついいながら流れに浸してやると、
分かりましたとも、おやすみとも言わずにさっさと帰っていきました。

というわけですので、今回は何処の川で釣ったのか、まったくのノーヒント。
無事に生き延びて、イワナの恩返しを期待しておりますので、場所もノーヒント。
常連の皆さん、ごめんなさいね。